【有聲日語】山口百惠自傳《蒼茫時分》結婚(1)


【有聲日語】山口百惠自傳《蒼茫時分》結婚(1)

ときおり、窓をたたく雨の音を聞きながら、ふと私たちの婚約発表の日のことを思い出している。あの日も、私の願いを裡切って、激しい雨が朝から降り続いていた。

三月七日。

聽著雨點時時敲窗的聲音,我突然憶起我們宣佈訂婚的日子。那天,天與願違,大雨從早就下個不停。

三月七日。


あの日の雨は、まるで私に、これからの人生が決して容易よういではないことを、重い口調くちょうで告つげているかのようだった。すぎるほどの緊張感の中で、微笑ほほえむ彼の存在の大きさをあらためて胸に刻みきざみながら、私は彼を見上げていた。

三浦 稔。二十八歳。

那天的雨,好象在用嚴肅的語調告訴我,今後的人生決非坦途。過度的緊張中,我抬起頭來看著他,他微微笑著的高大形象又一次刻在我的心上。

三浦捻,二十八歲。

彼との出逢いは、六年前。

十五歳、まだ頬ほおのあたりに、ふっくらとした幼おさなさを殘したままで、私は彼に出逢った。五月晴れとはいえ、東京の空は決して青くはなく、鈍色にびいろに輝かがやく光の中。

和他相遇在六年前。

那時我才十五歲,臉上還帶著幾分胖乎乎的稚氣。雖說是五月的晴空,但東京的天空卻絕非碧藍,顯得混地而迷濛。

CFの撮影のため、砧きぬたの緑地りょくち公園に來ていた。スタッフと待ち合わせた時間には少し間があり、制服を著たままの私は、車の中にいるのが嫌で車外しゃがいへ出た。特別、気持ちがよいといった空気ではなかったが、密室みっしつから解とき放はなたれた自由を、私は思いきりかみしめていた。


那天,我因為拍廣告片來到砧電影製片廠的綠地公園。與攝製組約好的時間還不到,身穿學生服的我不願意呆在車裡,便走下車來。空氣並不特別令人心曠神恰,我卻儘量享受著從悶罐子裡解放出來的自由。


その時、私は視界しかいの中に一臺の白い車を認めた。私の乗っている車からそう遠く離れてはいないその車から、ひとりの青年せいねんが降おり立たった。ブルーのトレーニングウェアに身を包んだその人と一瞬いっしゅん目が合った。しかし、お互いに挨拶を交わすでもなかった。緑地公園にトレーニングに來ているスポーツ選手という印象を持った。即座そくざにそう思えるほど、彼は健康的だった。

這時,一輛白色的汽車進入我的眼簾,一個青年人在離我們那輛車不遠的地方下了車。一瞬間,我和他目光相遇了。但我們彼此並沒有打招呼。他穿一身藍色運動服,讓人一眼就會看出他很健康。當時我以為,他是一位來綠地公園練習的運動員。



しばらく間があって、スタッフから紹介され、挨拶を交わした。「よろしく」別に笑顔も作つくらずに、彼はそのひと言ことだけを置おき去ざりにした。

過了一會兒,經過攝製組的介紹,我們才互相打了個招呼。他說了句“請多關照”,連個笑臉也沒有就走開了。


撮影が始まっても私たちはほとんど言葉を交わさなかった。私は彼に対して、それまで決して出逢ったことのない世界を感じていた。軽はずみな笑い聲など一切たてず、落ち著いた聲で話すその人の訥とう々とうとした語感ごかんが新鮮だった。それまで「山口百恵さんです」と紹介された途端とたん、必ずといってよいほど、相手の笑顔が返ってきた。內心の戸惑いとは別に、私も笑顔を作らねばならなかった。

攝影開始以後,我們也幾乎沒說什麼話。我在他身上感覺到了一個迄今為止絕對沒有遇到過的世界。他從不發出輕浮的笑聲,以一種穩重的語調跟人說話,那種訥訥而言的語感,使人感到新鮮。到目前為止,只要一介紹說“這位是山口百惠”,幾乎所有的人都馬上對我報以微笑。且不說自己內心的躊躇,但總得笑臉相陪。


戀のはじまりは、意外いがい性の発見から――と誰かが言うのを聞いたことがある。私の場合もそうだった。彼は、私の目にはあきらかに他の人たちと違って映うつった。初対面のぶっきらぼうな態度に、私は肩かたすかしを喰わされ、そして、それが少しも不快ではないことに、驚いていた。

戀愛始於意外的發現———一我聽誰講過這句話。我也屬於這種情況。在我眼中,他和其他人完全不一樣。初次見面時他那種生硬的態度出乎我的意料之外,然而奇怪的是我並沒有絲毫不快。


彼は、彼の全てを偽いつわることなく生きていた。それにひきかえ、私のほうは無意識にタレントという習性しゅうせいが身につきはじめていたのか、偽らざるを得ないことが多かった。

他毫不掩飾自己地生活。相反,也許我已經無意中沾染了演員的習性,在很多事情上不得不虛偽。


『潮騒』という映畫のロケーションのため、神島かみしまという小さな島に渡った。そこで私たちが到著した翌日、クランクインの記者會見かいけんが行なわれた。記者のひとりが、私たちに尋ねた。

「神島の人たちと接してみて、どうですか」


為了拍《潮聲》這部影片的外景,我們到過一個名叫神島的小島。抵達的第二天,舉行了影片開拍的記者招待會。有個記者問我們:

“與神島的居民接觸以後,作何感想呢?”


私は、それまでの仕事の中で、旨うまく答えることだけを訓練されている。

「ええ、とても暖かくて、素敵な方たちですね」

続いて彼も答えた。


以往的工作把我已經訓練得能夠圓滿地應付這些了。我說:“哎,他們特別熱情,非常好啊!”

接著,他也回答了。


分享到:


相關文章: